ハンナ・アーレントという人について[アーレント『人間の条件』をつまみ食い]
- 2018.10.18
- 思想
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僕の大好きな本にハンナ・アーレント『人間の条件』という本があります。
大学の時にこの本と出会ったのですが、自分の考え方とすごくマッチして、価値観のベースとなっているような、そんな素敵な本です。
しかしこの本、すごく難解です。
大好きといっている僕自身、どこまで理解できているのかすこし疑問だったり。
なので、この本をガッツリ紹介したいという気持ちはあるのですが、「つまみ食い」といえるくらい軽くの紹介に留めたいと思います。
難解なアーレントの思想を少しでも身近に感じていただけたらうれしいです。
一回で完結させることはなく、何回にも分けてお伝えしたいと思います。
ハンナ・アーレントという人
今回はハンナ・アーレントという人と何をやった人なのかをお伝えしたいと思います。
アーレントは1907年に生まれ1975年に亡くなった、政治哲学の分野の学者です。
ドイツに生まれたユダヤ人でしたが、ナチズムが台頭したためアメリカに亡命しています。
その経験もあり、全体主義の分析でも有名です。
全体主義の起原 1――反ユダヤ主義 【新版】
また、大学の時にはあのマルティン・ハイデッガーを師事しており、あろうことか当時既婚者であったハイデッガーと恋仲になっていたと言われています。
すごい人達は惹かれ合うのですね。。
そんな波乱万丈の人生を送ったのが、アーレントという人です。
労働、仕事、活動
アーレントが語られる時にテーマとなることがいくつかあります。
最初に人間の活動を「労働 labor」「仕事 work」「活動 action」に分けた話からしましょう。
これは著書『人間の条件』の主題でもあります。
まず「労働」とは、人間が生きるのに必要なものを生み出す活動です。
生きるために食べ物を育てたりするようなことです。
自分の生存を維持するための活動とも言いかえられるでしょう。
「仕事」とは、何かを行うための道具など、形の残るものを作る活動のことを言います。
例えば、テーブルを作ったり、建物を立てたりするなど。
「労働」により生まれたものは、生きるために消費してなくなりますが、「仕事」により生まれたものは、消費されずにずっと残っていくという特徴があります。
現代に置き換えてみると、サラリーマンとして働くことはどっちとも言えない場合が多いでしょう。
建設会社の場合、会社としては建物を立ててますので「仕事」と言えますが、サラリーマン単体を切り抜いてみると、自分の労働力と給料を交換しているだけですから「労働」とみることもできるでしょう。
「活動」は、独立した人と人とがあれやこれや議論したりすることです。
古代のヨーロッパで、おっさんたちが広場に集まってあーだこーだ議論を戦わせているイメージでしょうか。
政治的な活動がここに含まれます。
あくまでも原則論なので、この3類型がスルッと現代に置き換えられるわけではありません。
しかし、この原則をもとに現代を見ていくと、いろいろな気付きがあります。
全体主義の分析
アーレントはユダヤ人であり、ドイツからアメリカに亡命したことがあることから、全体主義の研究も行いました。
『全体主義の起源』という本になってまとめられています。
全体主義の起原 1――反ユダヤ主義 【新版】
全体主義と言うと、単に「独裁」というイメージを持ちがちです。
しかしアーレントはそれまでに存在した「独裁」とは全く違う存在として「全体主義」が現れており、それも国民国家の成立と崩壊のプロセスを経て生まれた、新しい政治体制だと指摘します。
「全体主義」がどうやって生まれたのか、かなりラディカルな視点から語っています。
エルサレムのアイヒマン
「全体主義」の研究の流れから、ホロコーストの中心人物であったアイヒマンという人の分析も行います。
アイヒマンとは第二次世界大戦中に何百万人ものユダヤ人を強制収容所に送るための兵站部門を受け持っていた人で、終戦後は逃亡を続け1960年に捕まりました。
ユダヤ人の虐殺の中心にいた人物ですからそりゃ悪人に違いないと思いがちですが、アーレントは「悪の凡庸さ」を主張しました。
アイヒマンは大悪党ではなく、政府に仕えるありふれた役人で、ユダヤ人の輸送の任務を与えられたからそれを行ったにすぎないと言うのです。
にわかには受け入れられませんが、大企業が会社全体で不正を隠蔽してしまうのはまさにこの論理。
事なかれ主義で大きいものに巻かれやすい日本では、むしろ「凡庸な悪」は存在しやすいのかもしれません。
アイヒマンについては『エルサレムのアイヒマン』という本にまとまっています。
エルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告【新版】
また『ハンナ・アーレント』という映画の中では、このアイヒマンの論争について描かれています。
ハンナ・アーレントという人を知るには手っ取り早い作品でもあります。
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まとめ
難解な思想をざっくり説明しました。
ピンと来ないポイントも多いかもしれませんが、それをこれから少しずつ「つまみ食い」して行ければと思います。
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