あなたの望みは「自己実現」か「承認欲求」か

あなたの望みは「自己実現」か「承認欲求」か

「自己実現」と「承認欲求」

よく聞く言葉ですが、あなたが常々考えている望みがあるとして、それはどちらでしょうか?

この2つを自分の心と照らし合わせて見ると、かなり解釈が難しいものです。

今回はそんな「自己実現」と「承認欲求」について書いていきたいと思います。

マズローの欲求階層説

「自己実現」と「承認欲求」はマズローの欲求階層説で説明されています。

それ以外の欲求3つを含めた、合計5つの欲求段階で説明されていて、このピラミッドは下から順番に満たされていきます。

簡単に説明していくと、最初に生理的欲求(食欲、睡眠欲など)を満たし、次に安全欲求(外敵などから襲われずに安心して暮らしたい)を満たして、さらに社会的欲求(人の集団に所属したい)を満たすことによって、承認欲求が生まれてきます。

現代においては、生理的欲求と安全欲求は何も考えずとも満たされていることが多く、社会的欲求も家族や友人関係、職場関係で満たせている人が多いかと思います。

したがって多くの人々の課題となるのは、社会的欲求より高次の欲求である「承認欲求」と「自己実現欲求」です。

「承認欲求」はまわりの人から認められたい!と思うことです。
社会的欲求では、人の集団に「所属」することで、仲間に入れてもらうだけで良かったですが、その欲求を満たせると、その中で尊敬されて上に見られたいという感情が沸き起こります。

仕事で昇進・昇給したり、勉強して国家資格を取ったり、スポーツの大会で優勝したり、そういうことを通してまわりに「すごいね!」と言ってほしいと思う感情です。
芸能人として有名になりたい、というのもこの感情から起こります。

その欲求を満たせると次の段階は「自己実現欲求」です。
これは他人の目は関係なく、自分が「これを達成したい」ということを成し遂げようとする感情です。

芸術家が人目を避けて山にこもり、自分の理想を一人で作り上げていくような姿勢は、この欲求を説明するのにピッタリかと思います。
もちろん芸術だけではなく、色んな分野で当てはまる欲求です。

世界に自分1人だったらそれをやるか

自己実現欲求の説明で「他人の目は関係なく」と言いましたが、ここの解釈が難しかったりします。

例えば「環境問題を解決するために活動したい」という感情があったとして、これは自己実現欲求と言えるのでしょうか。

それを考えるには「世界に自分1人だったらそれをやるか」と問いかけるとわかりやすいです。
その答えが「誰も見てくれていないならやる必要を感じない」であれば、それは承認欲求です。

「自己実現」と言っている人の多くは、承認欲求の結果であることが多いのではと感じます。

「起業して世界を変えたい」→「社長として高い給料をとり、世界に影響力があると、まわりが尊敬してくれる」
「ピアノを自由に弾きたい」→「音楽を自由にできると、まわりから才能のある人だと思われる」
「世界の飢餓をなくしたい」→「世界の問題に関心を向け、誰かを助けるようなことをしていると、まわりからすごい人だと思われる」

目標に向かってひたむきに頑張っている人でも、実は自己実現ではなく、このように承認欲求から行動していることが多いのだと思います。

そして承認してほしい相手は社会全体と言うわけでもなく、友人や好きな人、親や先生など、意外にもすごく身近だったりします。

「世界を変える」とか言っておきながら、実は近くにいる人から認められたいだけ、なんてスケールが一気に小さくなってしまいますが、よくある錯覚です。

承認欲求の良い悪いを言うつもりはありませんが、大事なのは自分の欲求が何なのかを見極めることです。

課題の分離

他人の目線への対処として、アドラー心理学では「課題の分離」という考え方があります。

何か問題が起こっているとして、それは自分の課題なのか、他人の課題なのかをしっかり分けて考え、他人の課題には干渉せず、自分の課題には口出しさせないという姿勢です。

例えば、仕事に不満ばかり言っていて「転職してやる」といいながら何年も転職活動を始めない友達を見て、「早く転職しろよ!」と言いたくなりますが、これは他人の課題なので干渉すべきではありません。

また意外な例として、アドラー心理学では子供も立派な人間として扱いますが、子供が勉強をするかどうかも子供自身の課題となるため、「勉強しなさい」と言ってはいけません。

人の課題に対してとやかく口をだす、つまりある行動を期待する行為は、相手がその期待に応えようとする承認欲求を起こすきっかけになります。
そうなると相手は自分からの承認を求めて行動を始めるのです。

現代にはこういう関係性がとても多いため、誰もが多くの承認欲求を求めているように感じられます。
しかしアドラーは「課題の分離」をしっかりしていくことで、人間関係を承認集めゲームから脱却させるべきだといいます。

この教えを完璧に実現するのはむずかしいことだと思いますが、承認欲求にがんじがらめになっている人には一つのヒントになると思います。

まとめ

現代は「承認不安」の時代だと言われています。
承認欲求を満たすことが難しくて、誰もが承認を求めている状況です。

インスタグラマーでキラキラを演出している人なんて顕著ですよね。
世間がドライになっていって、会社というコミュニティーの人間関係が希薄になっていることが一因とも言われています。

一方で「やりたいことをやって夢を叶えよう」ということもよく耳にするようになりましたが、それも根っこでは承認欲求が絡んでいるように感じます。

夢を叶えて、給料が上がって、高級車に乗って、色んな人から尊敬されたい、みたいな感情なのではないでしょうか。

人の感情を理解するのは難しいです。それは自分自身でも同じです。
しかし少しずつでも自分の感情を解き明かしていくことによって、人生をより豊かにすることができるのだろうと思います。

この記事が参考になり、自己理解を深めていただけるとうれしいです。