メディチ家の交易と現代の転売

今回もいま読んでいる本からの考察です。(まだ同じ本読んでるのかよというツッコミはなしで)
メディチ家をはじめとした昔の金持ちが行っていた金儲けの一つに、交易があったという話は以前しました。
僕が今やっている仕事の一つに、海外から輸入した商品をネットショップで販売するという商売があるのですが、この転売ビジネスも言ってみれば交易ですよね。
しかし「交易」と「転売」では、受ける印象もその実態もかなり格差があるような感じがするので、今日はその差は何なのかについて考えていきたいと思います。
ビジネス構造
交易
昔の交易は、ある地域で商品を買って別の地域に持っていって販売することにより、利益を得るビジネスモデルでした。
ルネサンス期のメディチ家はヨーロッパの広い範囲にネットワークを持っていて、各国のあらゆる物を別の国に持っていって莫大な利益を得ていたようです。
鎖国期の日本は海外との貿易は自由に行えなかったですが、各藩の間で商品を動かして利益を得る「豪商」なる人達が各地にいました。
いずれも国や地域の違いによって分断された各市場の価格差に着目し、その市場間で物を移動することにより、市場価格の差を抜いて利益としていたわけです。
転売
一方で転売のビジネスモデルはというと、異なった市場での価格差を抜くという意味では交易と同じ形態です。
海外のネット市場と日本のネット市場の価格は、通貨や流行りや各メーカーの戦略の違いなどがあり、価格が異なります。
なので海外から日本に商品を流すことによって、その差分を利益として抜くわけです。
僕はやりませんが、国内の市場を楽天・アマゾンなどのプラットフォームで細分化したり、また実店舗のヤマダ電機などまで小さくすることによって、国内で物を動かして差分を抜いている人もいます。
比較
昔の交易と現代の転売は、実際に手を動かしてやっていることは違いますが、その本質は2市場間の価格差を抜くという点で同じです。
しかしその2つを比較すると、収益性に大きな違いがあるような感じがします。
交易をしてた過去の人達が莫大な利益を得ていたのに対し、現代の転売プレイヤーは副業レベルでほそぼそとやっている人も多いですよね。
会社の規模の差だろうという意見もあるでしょうし、それも一理あるとは思いますが、それが全てではないと思います。
日本の大手商社は、バブルくらいまではトレーディング事業で大きな利益を得ていましたが、次第に収益性が悪くなっていき、最近では工場や鉱山などへの事業投資を積極的に行っているという情勢の変化があります。
なので異なる市場で物を動かして利益を得るというビジネスモデル自体に、何か大きな環境の変化が起こっているのだと思います。
テクノロジーの違い
様々な分野でテクノロジーが発展していることにより、いろいろな違いが出てきているように思います。
情報
一番大きいのはインターネットによる情報の速度の変化かもしれません。
これによって世界中のものの相場がどこにいてもわかるようになりました。
僕が海外の相場を知れるのも、インターネットで海外のサイトにアクセスできるからです。
これがないと実際に自分で現地を訪れたりして情報収集しないと行けないですからね。
情報が速く、そして安く手に入るようになったことで、世界の各市場はぐっと近寄り、価格差が縮まっているのだと思います。
このあたりに日本の商社がトレーディングで苦戦している状況もあるのかもしれません。
輸送手段
輸送手段は、昔の交易では馬や船などに載せて運んでいたわけですが、現代では飛行機や大型船、トラックなどを使うことによって、価格もスピードも格段に改善しました。
昔は盗賊もいたわけで、今ならそんな心配はありませんし、なんなら輸送中の商品の破損まで保証してくれます。
とはいえ、直近数十年で言うと、飛行機や大型船、トラックを使うという意味ではそれほど変化はありません。
むしろ原油高で少し価格が上がっているくらいかもしれませんね。
しかし宅配という面では地味に重大な変化をしており、個人間での輸送の仕組みが急速に整っています。
国際郵便やFEDEX、DHLなどを使うと、国境をまたぐ輸送でも、驚くほど速く、そして安く簡単に行うことができるようになりました。
販売手段
販売する手段も大きく変化しています。
ネットがなかった時代には、当たり前ですが商品は実店舗でしか買えませんでした。
現代でも同じですが、実店舗は出店するだけで何百万もかかり、とてもハードルが高いです。
しかしネットが発達すると、数万円もあればネットショップを作ることができます。
またアマゾンやメルカリなどを使うと、自分でショップを構築せずとも商品を販売することができます。
これらを使って副業としてでも販売手段をもるというのは、現代だからこそできることだと言えますね。
ライバルの爆発的な増加
インターネットによって、2市場間の差を抜くビジネスは格段にやりやすくなったわけですが、その結果起こったことが競合の爆発的な増加だと思います。
いわゆる「参入障壁」がかなり低くなったということで、こういう状況でなければ僕も参入していなかったでしょうから、これから始める人にとってはメリットという側面はあります。
昔の交易の時代と比べると、当時はキリスト教で交易が嫌われる存在だったということもありますし、身分的なこともあったでしょうから、ライバルの数は現代とは全然違っていたと思います。
その時代から、現在では個人までが副業で参入しているわけで、競合が増えてくるとそれは利幅は狭くなりますよね。
たくさん利益取れてた交易の時代から、薄利の転売の時代へとなってしまった理由は、競合が増えたことによって競争が激化したことだと言えると思います。
おわりに
華やかな交易のイメージと、怪しい転売のイメージの差がだんだんと見えてきました。
次回は交易からなにか教訓が得られないか考えてみたいと思っています。
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