零細企業の生き残り戦略

零細企業の生き残り戦略

実家の会社の経理を片手間でやっているのですが、そっちの業績がやや怪しくなっているので、零細企業の経営について考えていきたいと思います。

前提とする会社

実家の会社は地方の建設系の会社です。

会社の規模は10人以下、毎年の利益はギリプラスくらいの経営状態となっています。

設立から30年経っていますが、途中でバブルの波に飲まれていて、借金はそれなりにあります。

と、こんな会社を前提として以下の内容は考えていきます。

一般化して書いていくつもりではありますが、多少この状況によった内容になるかとは思いますのでよろしくお願いします。

注目すべき2つの要素

零細企業の経営において大事なことは、「利益」と「資金繰り」の2点です。

「利益」とは損益計算書上で上がってくる利益を上げていくことで、「資金繰り」は日々のキャッシュフローの出入りをしっかり管理して資金ショートしないようにすることです。

「利益」を追求するのは当たり前のことですが、それと並列して「資金繰り」を置いていることに違和感があるかもしれません。

しかし私の経験上、零細企業レベルの会社の社長は日々資金繰りに追われている人が多いと思います。

黒字倒産という言葉があるように、たとえ損益計算書上で黒字となっていても、資金繰りが詰まってしまい倒産してしまう事は、レアなケースではまったくないのです。

これは日々資金繰りに追われている人なら実感することでしょう。

そして論理の上では、長期的な目線で損益計算書の「利益」を増やし、そして「資金繰り」で日々のお金の出入りを回していけば、会社にお金は自然と残っていきます。

したがってこの2つの要素をどうしていくのかを考えていくのが、零細企業の経営では最重要であると考えます。

また会社の理念とか社会貢献とか、大学で経営学を専攻していた身からするといろんな重要なことが浮かんでくるのですが、これらは零細企業にとっては二の次です。

「利益」の下位に位置づけられる要素だと言ってもいいかもしれません。

零細企業は「利益」と「資金繰り」の2点を考えるだけで十分です。

他のことを考える余裕は忙しい零細企業の経営者にはありませんし。

利益

まずは「利益」について考えます。

利益にもいろいろあって、粗利益、営業利益、経常利益、純利益がよく使われるところかと思いますが、どれに注目していくのかは会社の業態などによって自由に選べばいいと思います。

純利益は一番正確な数値にはなりますが、その増減を日々追っていくのは手間がかかりすぎ、一方で粗利益は計算は簡単ですが、ざっくりとした数値だという欠点があります。

うちの会社の場合は、間接費にあまり変動がないため、ざっくりと粗利益で追っていくので問題は無いかと思っています。

ちょっと頑張ったとしても、零細企業は営業利益までわかっていればいいのではと思います。(営業外の利益などがいろいろと計上されている会社だと話は変わりますが。。)

大事なのはどれだけ手間なく、十分な精度をもって利益を把握していくかです。

そしてこれはうちの会社だけのレアなケースなのかもしれませんが、損益計算書上の利益と実際の会社の利益が乖離する場合は、税理士が出してくる損益計算書ではなく、会社側できちんとした利益を計算する必要があります。

どういうことかと言うと、うちの会社は業績が悪化していた時期に経理がぐちゃぐちゃになっていて、その余波で現在の損益計算書上の利益と会社に残るお金に乖離が生まれてしまっています。

会社経営は損益計算書上の利益を増加させることが目的ではなく、実際の会社の現金を増やしていくことが目的です。

なので、こういう場合はきちんと会社に残る実際の利益を見ていくことが重要です。

資金繰り

そして零細企業の経営者を悩ませるのが資金繰りです。

建設業や製造業など、仕入による支出と売上からの入金のタイミングに差が出やすい業種は、特にこの悩みが大きいでしょう。

利益が出ていないのであれば、そもそも長期的に見て会社からお金はなくなっていく一方なので、資金繰りどうこうという以前の問題になります。

利益がきちんと出ているのであれば長期的に見てお金が残るはずですので、短期的な現金の増減を上手くコントロールすれば、現金は会社に残っていきます。

資金繰りをコントロールするための第一歩は資金繰り表を作ることだと思います。

未来の現金の出入りが見えるようにならないと、コントロールなんでできるはずもありませんから。

そしてその上で資金ショートしそうになった時にどうするかを予め考えておきます。

方法としてはいろいろありますが、代表的なのは銀行から借りることでしょうか。

緊急の時に急に銀行に申し込んでも、実績がなく断られたり、段取りが分からず時間がかかったりするので、余裕のあるときから相談したり実際に借りてみたりして、緊急の時にはすぐに借りれるようにしとけば安心です。

このような現金を用意する方法をいくつか用意していて、資金が無くなりそうだと予め分かった時は余裕を持って現金を用意することで、ストレスなく資金繰りを行っていくことができます。

そして繰り返しになりますが、利益がプラスで推移していれば、日々の資金繰りを回していくことによって、会社にお金は自然と残っていきます。

日々の運用

「利益」と「資金繰り」をきちんと把握して、予定通りの利益を残し、問題なく資金繰りを回していけば、会社にお金が残っていくのは分かっていただけたかと思います。

文字にすると当たり前のことですが、日々の業務を行っていく上ではこれを忘れてしまうことも多いかと思いますので、常に意識することが大切です。

そしてこれらのことに着目した上で、それらに対する計画を実行することが必要です。

計画実行

まずは計画をする必要があります。

「利益」の計画は日々の利益の目標を立て、それを実現するにはどんな方法を取る必要があるのかを考えます。

チラシを配ろうとか、客単価をあげようとか、そういうことですね。

「資金繰り」の計画は、資金がショートしそうになった時に、どのタイミングでどういう行動をするのか予定しておくことです。

ショートしそうな1ヶ月前には、必要な資金プラス100万円の余裕分をもたせた金額を借りる相談をする、とかです。

そして計画を立てたらそれを具体的なタスクにまで落とし込みます。

日々の緊急性の高い仕事に追われていると、このような重要度の高いが緊急性の低いタスクは後回しにされやすいです。

したがって月の目標に落とし込むのでは十分ではなく、今日何をやるのかまで落とし込まなければ実施される可能性は極めて低くなるでしょう。

利益と資金繰りの計画実行は、会社経営において最重要であると言えます。

なのでそれらを確実に実行していけるように、あらゆる手を尽くす必要があります。

日々の運用

計画実行していく中で、定期的に同じ作業を行うルーティン業務が発生してくると思います。

とくに資金繰りなんかは、毎日のように資金繰り表をチェック・修正するような業務が出てきます。

計画段階ではやろうと思っていても、実際に他の業務に追われて忙しくしていると、後回しにしてそのうち忘れてしまうことはありがちですよね。

資金繰りは、問題ない時は無視しても回ってくれるため、後回しにしやすいことだと言えると思います。

こんなことがないように、日々やるべきことは、毎日のルーティンにしておくことをオススメします。

利益と資金繰りは会社の最重要課題なので、今日締切の他の業務を後回しにしても、それらを優先してやるべきだと思っています。

月次の検証

計画をしてそれを日々実行していくと、うまく行かないこともたくさんあると思いますが、それを月に1回検証する必要があります。

利益を伸ばし、資金繰りを問題なく回す、というのは言葉はシンプルですが、そこにいたるプロセスはとても複雑です。

そのプロセスは計画段階である程度仮定して実施していくしか無いのですが、その仮定があっていたのか答え合わせするのがこの検証作業です。

チラシを1000枚配れば、1%の10人から問い合わせがあり、30%の3人から受注し、客単価30万で粗利益が合計で25万残るから、通常の粗利益と合算すれば今月の利益目標が達成できる、という仮定があったとします。

しかし実施してみると、1000枚チラシを配る時間がなかった、受注率が思ったほど高くなかった、チラシ配りと対応に追われ通常見込める方の利益が減ってしまった、など様々な想定外なことが起こると思います。

そういった想定外を一つずつ潰していって、計画どおりの結果を得られるようにしていく必要があるのです。

最初は想定外だらけだと思いますが、きちんと検証と改善を重ねていくことでノウハウがたまり予定外のことがなくなっていきますので、とにかく続けることですね。

まとめ

書いてきたことは単純です。

重視すべきは、利益を増やすことと、資金繰りを問題なく回すこと。

それぞれについて計画をして、それを実行していく。

そして計画・実行を検証して、精度を高めていく。

計画通りに利益増加と資金繰りが行えると、会社にお金が残っていく。

論理の上では簡単なことですが、実際はそう簡単なことではないでしょう。

やっていること自体が難しいわけではありません。

利益を増やすためのヒントはネットで調べただけでも無数に存在しますし、それをもとに計画して試してみて、ダメだったら別の方法を考えてみて、を自分の脳力の範囲でやっていければ十分です。

簡単ではないのは、行動することそれ自体でしょう。

日々の業務に追われていると、どうしてもこれらの優先度の低いタスクは後回しになってしまいます。

そしてそのうちタスクの存在自体忘れてしまいます。

そこをいかに意識づけして、仕組み化して行動していくかが鍵となると思います。